まず、新井英樹『宮本から君へ(定本)』(→amazon)。これがスピリッツに連載されていたころは、世の大体の人がそうだったように、大っ嫌いでしたねえ。定本に記されるコメンタリー部分では、ツルモク独身寮的な雰囲気をぶち壊したかったとのことで、とはいえモーニング掲載なのだけど、90年から94年に連載だったとのこと。ワタクシは高校生真っ盛りで、恋も性も大人の感じも幻想たっぷりだったので、そりゃあ嫌いになるわとやっぱり今も思います。何かの雑誌で、嫌いなマンガランキング一位をとったとか。好きと嫌いは裏腹だからねえ。
しっかし今読むとこれがクッソ面白いのですね。新井英樹節は『ザ・ワールド・イズ・マイン』『シュガー』『リン』で免疫体制が整っているので、おなじみの底意地の悪さは腹にためて読んでいけるわけです。前半の営業勝負も、後半の「これは全て俺の喧嘩」エピソードも、30代前半で読んでみたらまた感じが違ったかもしれないなと思って、今更読もうと思ったことを少しだけ後悔しました。いま、ちょっと上司目線で読んじゃってしまってたから。
それでこの際と思って、『愛しのアイリーン(定本)』(→amazon)も。スピリッツに95年から96年に連載。これもねえ。高校から大学にかけてチラ読みしてたけれども、当時はだめだった。
で、こちらは考えてみたら山形にもご縁のあるテーマなのだよね。高度成長期後の地方社会の閉塞感(娯楽がパチンコくらい、みたいな)、嫁不足、国際結婚、家制度による「外国人嫁」への排外的圧力などがステレオタイプ的に描かれている。授業でもこの手の問題系をわずかに取り扱っているので、読まなきゃなあと思って読み始めました。内容は、取材を下敷きに描かれているだけあって、ずいぶんリアルなところもあり、しかし新井英樹なので露悪的かつ分かりやすいハッピーエンドなしの鬱展開です。この手の問題をリアル世界で学ぼうとすると、どうしても死角になるのが性の問題なのだけど、そこを遠慮会釈なく掘り下げているのが胸をえぐります。ラストは家制度の問題を母性の問題にしてしまっているのも、新井英樹節でしょうか。国際結婚で姑との関係に激しく問題があって、であるにもかかわらず日本人のダンナが死んでしまうという展開以後、殺しあうかの勢いで介護に向かい合う壮絶さが特に印象に残りました。
マンガ読みにはおすすめまくりです。
それでこの際と思って、『愛しのアイリーン(定本)』(→amazon)も。スピリッツに95年から96年に連載。これもねえ。高校から大学にかけてチラ読みしてたけれども、当時はだめだった。
マンガ読みにはおすすめまくりです。
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