職場の企画として応募していた文部科学省GPが通った。関連してか、朝日新聞の特集にも取り上げられていて、小さな社会では枯れ木も山のかも、とは思いつつ、でもやれることが広がるのはうれしい。
さて、そのプロジェクトには、「みんなでやろう」という意味の言葉が含まれている。山形の地域と連携しようという意味合いなので、山形の言葉を用いるのがいかにもそれっぽかろうと考えたわけだが、はて何と言うのだろうという疑問が持ち上がった。「やろう」だから「やんべ」「やっぺ」「やっべ」あたりが候補として考えられた。企画メンバーに(というかうちの学科に)山形ネイティブがいないのでどうにも判定ができない。職員のネイティブの方にどれが自然?と尋ねても、どれも使いうる?といった曖昧な答えで、迷走するうちに日本語学専門としてはどうなのよ、とお鉢が回ってきた。
概説レベルの日本語学が教えるところでは、促音の後に濁音は来ないのがいわゆる語音配列則。したがって「やっべ」はないだろうと考えた。東北方言については手元にあるいくつかの文献を見てみても、この手の記述が見つからない。東北地方で促音の後に濁音あり、という地域固有の語音配列則でもあるのかなあと思いつつも、古典的名著である小林好日『東北の方言』(1944,三省堂)にもやはり促音の後に濁音なしとの記述が随所にある。
えー。小林先生、ってことは「ヤンベ」ですかぁ?でも、地元的には「ヤンベ」は一番少ない回答だったような…。結論から言うと、企画書ではこのあたりのことに決定打がないまま、まあ大事なのはそこじゃないし、ということで「ヤッペ」に決着している。「ヤッベ」は語音配列則的にないだろうし、「ヤンベ」はあまり耳にしないし。何より「ヤッベ」は伝統的には語音配列則の違反例でありつつも、首都圏での若者言葉としてヤバイの意味で使われている。その連想はまずかろうという判断もあった。つまり消去法的に「ヤッペ」が選ばれたわけである。ところがこれが職員から、それ微妙~との声をいただいていて、少なくとも「やっぺ」はないだろうと。うん、これは仙台とか茨城とかの太平洋側の臭いがする。
ところで先日、子供の予防接種のために地元の保険センターに行った時、ママさんサークルか何かのチラシに「~してみっべ」というキャッチフレーズを発見!「ヤッベ」あり得るのかと全米に衝撃が走ったのだった(全米=全米沢市のこと)。
ということで、まず降りた予算で、全山形地域に「やっべ」「やんべ」「やっぺ」の使用実態調査を行うというのはどうだろう。国立国語研究所もびびる県民全数調査を、その予算で!
さて、そのプロジェクトには、「みんなでやろう」という意味の言葉が含まれている。山形の地域と連携しようという意味合いなので、山形の言葉を用いるのがいかにもそれっぽかろうと考えたわけだが、はて何と言うのだろうという疑問が持ち上がった。「やろう」だから「やんべ」「やっぺ」「やっべ」あたりが候補として考えられた。企画メンバーに(というかうちの学科に)山形ネイティブがいないのでどうにも判定ができない。職員のネイティブの方にどれが自然?と尋ねても、どれも使いうる?といった曖昧な答えで、迷走するうちに日本語学専門としてはどうなのよ、とお鉢が回ってきた。
概説レベルの日本語学が教えるところでは、促音の後に濁音は来ないのがいわゆる語音配列則。したがって「やっべ」はないだろうと考えた。東北方言については手元にあるいくつかの文献を見てみても、この手の記述が見つからない。東北地方で促音の後に濁音あり、という地域固有の語音配列則でもあるのかなあと思いつつも、古典的名著である小林好日『東北の方言』(1944,三省堂)にもやはり促音の後に濁音なしとの記述が随所にある。
加行変格左行変格にもべとぺとの二種があり、分布は一段活用の場合とほゞ一致して居り、福島県では北会津・耶麻・河沼・若松市がクンベ、スンベと云ふのを除いて、クッペ、スッペ、宮城県では左変にはスンベと云ふこともあるが一般にはスッペで、加変はクッペ、その他は山形でクンベ、スンベ、岩手でに(ママ)クベ、クルベ、クンベ、スルベ、スンベ、シベ、シンベ、青森県ではクルベァ、クルベシ、シベァ、シベシ、(下略)
同書,p.168
えー。小林先生、ってことは「ヤンベ」ですかぁ?でも、地元的には「ヤンベ」は一番少ない回答だったような…。結論から言うと、企画書ではこのあたりのことに決定打がないまま、まあ大事なのはそこじゃないし、ということで「ヤッペ」に決着している。「ヤッベ」は語音配列則的にないだろうし、「ヤンベ」はあまり耳にしないし。何より「ヤッベ」は伝統的には語音配列則の違反例でありつつも、首都圏での若者言葉としてヤバイの意味で使われている。その連想はまずかろうという判断もあった。つまり消去法的に「ヤッペ」が選ばれたわけである。ところがこれが職員から、それ微妙~との声をいただいていて、少なくとも「やっぺ」はないだろうと。うん、これは仙台とか茨城とかの太平洋側の臭いがする。
ところで先日、子供の予防接種のために地元の保険センターに行った時、ママさんサークルか何かのチラシに「~してみっべ」というキャッチフレーズを発見!「ヤッベ」あり得るのかと全米に衝撃が走ったのだった(全米=全米沢市のこと)。
ということで、まず降りた予算で、全山形地域に「やっべ」「やんべ」「やっぺ」の使用実態調査を行うというのはどうだろう。国立国語研究所もびびる県民全数調査を、その予算で!
コメント