久しぶりにグッと来るマンガを読んだ。山田参助『あれよ星屑(1)』((→amazon)。こんな画風のいまどきのマンガ家がいるもんかねと思う。線とスクリーントーンに、谷口ジローと岡崎京子が漂っている。書店で手に取った1巻の帯に「死にぞこないふたり。焼け跡トーキョーアンダーワールド」とある。昭和の泥臭い感じと、それでいて、しかしながら、どこかポップで救いのある印象を売ろうとするのは、そんなもんかなと思った。うん、でも政治の話ではないから誤解して文句つけんなよ的ではある。東京ガールズブラボーであり、エンド・オブ・ザ・ワールドであり、と。表紙の色使いなんて既視感ありありでしょう。
戦時中にほとんどの部下を死なせてしまった元班長の川島と、元部下の門松が偶然東京で出会う。生きていた上司との再会を喜び、上司を慕う門松と、それを億劫に思いながらも門松を身近に置く川島の与太話が1巻。
川島「無駄死にから逃げて逃げて 結果は皆くたばらせて 俺だけ死にぞこなったんだ 他の死にぞこなった奴らが言うように「死んだ奴の分まで」とはどうしても思えねぇ 死んだ皆の命と俺の命は別々のもんだ 俺はあいつらの代わりにはなりたくってもなれねぇ」
門松「俺ァ学がねえからムズカシイ事はわかりません でも でもネ 俺ァ…班長殿が生きててくだすって こうして東京でまた会えてサ 本当にうれしかったんだ」
ちょっといい雰囲気。
後半は売春で働く女性たちの悲喜こもごもと、とはいえ99%が悲しいほうなわけだが、でもトータルとして悲喜こもごもに読ませる筆致がお見事だと思う。この方サブカルっぽい独特の匂いがあるのは、山田参助 - Wikipediaによればアングラ系の(というと語弊あるが)雑誌で活躍されていたのですね。戦後の残酷さを、この目線だからどこまでも体温で描けるというのがあるのだろう。
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