出張エピソード最終話。秋田出身の年上の方と車の中で。 「ご実家ってどういう食卓だったんすか」 「うちは肉とかあんまり食べなかったなあ。ものすごいしょっぱい塩鮭とかならよく食べた」 「あー」 「それでご飯をたくさん食べるのが基本」 「秋田の内陸だと魚はあんましってことすかね」 「でもハタハタは飽きるほど食った。内陸なのになんでハタハタだけトロ箱にドーンって」 「あー」 「それを味噌汁に入れて塩鮭とかね」 「しょっぱい物好きって健康にどうなんすか」 「いいわけないんだけど、でも塩気が薄いと食った気がしないんで、何でもしょっぱかったなあ」 「野菜はどうなんですか」 「ぬか漬けに醤油かけたりしてたかも」 僕は祖母から聞いた食べ物の話で覚えているのが2つあって、1つが塩辛の烏賊。冬になると多めに作って壷に入れて屋外で保存したとか。高校生くらいの時に作り方を教わって、今もちょくちょく作る。もう1つがぬか漬けの話。戦災後に都内のボロ屋だかに住んでいた折、近所でものすごくおいしいぬか漬けに出会って、あんまりおいしいのでぬか床を少し分けてくれないかとお願いしてみたら即座に断られたんだと。昔は家々でぬか床の配合は秘蔵されていたものだとか、そういうエピソードだったと思う。しかしついぞぬか漬けは祖母から教わらなかった。 という話を思い出したりして、思い立ってぬか漬けを作ってみた。いまはぬか床も配合済みのセットがあって水を混ぜるだけ。昨晩から漬けてみたきゅうりを今朝取り出してみたものの、少し塩がゆるい。冬なのでまだ早かった。春夏がメインのぬか漬けだものなあ。