子どものご近所コミュニティ行事で、稲刈りを手伝った。春の田植えからここまで来ているわけだが、奥さんに任せっぱなしにしていて、父親は初めての参加。1年ぶりのバスケでも大丈夫だったのに、稲刈りのハードさで右足付け根を軽く肉離れした模様。連日の雨でぬかるんだ田んぼに長靴がのめり込み、引き上げる動作がこの事態を招いたようだ。
稲刈りが終わって、稲を天日干しにする。田んぼに突き刺した棒に、ひとつかみ大に結わえた稲を干していく。写真を取らなかったので、その様子をこちら(→雰囲気だけ:はせがけ)で。山形に来てからやたらに見かけるこの干し方、稲刈り教室のじっちゃん先生に「これ何て言うんですか?」と尋ねてみたところ、「はせ。棒ははせ棒。こうしたのははせがけ」との答え。初めて名前を知った。
帰宅後、日本国語大辞典(第二版)を調べてみるも、載っていない。方言辞典の類には載っているかどうか。はせがけ体験をしてみて分かったが、紐などで棒に結わえるのではなく、棒に直角に打ち付けられた横板に稲を互い違いに乗せていき、その重みであの形を保っている。とすれば、「斜掛(はすがけ)」の転か。などといい加減に考えて東北地方の習俗に由来を持つのかなどと想像していたら(これこそまさに語源俗解,folk etymology)、東海地方で「はざ」という記述を発見(→稲を干す。 | 特集 | 住まいネット新聞「びお」)。ああ、これは小さい頃よく見た形だ。そこで改めて日本国語大辞典の「はさ」の項目を見ると、ヒット。
確かに稲を架ける様子は、斜すようにも見えるが、挟むようにも見える。むしろ東海地方のような横に組んだ棒に挟む形で縦に架けていく様子こそが、「挟む」にふさわしい表現であるから、こちらが本来の形か。山形の「はせ」はそもそも「架ける」という表現では無理がありそうでもある。いずれ地域ごとに稲架けの方式が変容して、東北地方では縦にした棒に稲を架けるようになった。そして名称だけがそのまま残って、語形と意味のつながりが失われたと考えるべきだろう。
保元の乱、ではなくて方言の欄を参照すると、同系の言葉が本州に広がる。文献の初出例として『和訓栞』(谷川士清,1709-1776)が挙がるが、文献に挙がりにくい言葉であることを考え合わせると、稲作の年間ルーティーンが本州で定式化するあたりまで時代的に遡ることができるか。山形県では、「はせ」の語形が挙がるほか、はせを立てる場所「はせば」として山形県西置賜郡・南置賜郡が挙がる。
肉離れでワンロスト、はせの語源でワンゲット、今回は引き分け。
(追記)
近所の田んぼで撮ってきた。

稲刈りが終わって、稲を天日干しにする。田んぼに突き刺した棒に、ひとつかみ大に結わえた稲を干していく。写真を取らなかったので、その様子をこちら(→雰囲気だけ:はせがけ)で。山形に来てからやたらに見かけるこの干し方、稲刈り教室のじっちゃん先生に「これ何て言うんですか?」と尋ねてみたところ、「はせ。棒ははせ棒。こうしたのははせがけ」との答え。初めて名前を知った。
帰宅後、日本国語大辞典(第二版)を調べてみるも、載っていない。方言辞典の類には載っているかどうか。はせがけ体験をしてみて分かったが、紐などで棒に結わえるのではなく、棒に直角に打ち付けられた横板に稲を互い違いに乗せていき、その重みであの形を保っている。とすれば、「斜掛(はすがけ)」の転か。などといい加減に考えて東北地方の習俗に由来を持つのかなどと想像していたら(これこそまさに語源俗解,folk etymology)、東海地方で「はざ」という記述を発見(→稲を干す。 | 特集 | 住まいネット新聞「びお」)。ああ、これは小さい頃よく見た形だ。そこで改めて日本国語大辞典の「はさ」の項目を見ると、ヒット。
はさ【稲架】《名》(挟(はさ)むの意。「はざ」とも)農家で、木や竹を組み、刈り取った稲をかけて乾燥させる設備。おだがけ。いなかけ。
確かに稲を架ける様子は、斜すようにも見えるが、挟むようにも見える。むしろ東海地方のような横に組んだ棒に挟む形で縦に架けていく様子こそが、「挟む」にふさわしい表現であるから、こちらが本来の形か。山形の「はせ」はそもそも「架ける」という表現では無理がありそうでもある。いずれ地域ごとに稲架けの方式が変容して、東北地方では縦にした棒に稲を架けるようになった。そして名称だけがそのまま残って、語形と意味のつながりが失われたと考えるべきだろう。
保元の乱、ではなくて方言の欄を参照すると、同系の言葉が本州に広がる。文献の初出例として『和訓栞』(谷川士清,1709-1776)が挙がるが、文献に挙がりにくい言葉であることを考え合わせると、稲作の年間ルーティーンが本州で定式化するあたりまで時代的に遡ることができるか。山形県では、「はせ」の語形が挙がるほか、はせを立てる場所「はせば」として山形県西置賜郡・南置賜郡が挙がる。
肉離れでワンロスト、はせの語源でワンゲット、今回は引き分け。
(追記)
近所の田んぼで撮ってきた。


コメント
このサイトに、にお積みの景色の写真があります。
なんか、ちょっとかわいいモンスターが行列しているみたいな、そんな感じで、私はこの風景、好きなんです。
これって稲じゃなくて豆なんですね。