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ポストモラトリアム時代の若者たち

村澤和多里・ 山尾貴則・村澤真保呂『ポストモラトリアム時代の若者たち (社会的排除を超えて) 』(→amazon)読了。ちょっとグッと来たのでレビュー。

大学を「モラトリアム」と揶揄しようとして「サナトリム」と呼んだ人に最近出会って、なんだかこの人の中では大学は何かを猶予されている病棟のように映っているのだなあと思ったことがある。本書をざっくり説明すると、そういう風に見ようとする視座も分からなくはないけれど、でもそう見えているのだとしたらそれって学生の本質的な無気力によって生まれたものではないよね、と教えてくれる本。

本書の話の枠組みは、(1)フォーディズムのもとで農村=自然から都市=社会に組み込まれていく段階、自己変革の猶予段階としてのモラトリアム論から、(2)消費社会まっただ中では自己も消費されてしまうので自分探しとしてのモラトリアムが横行、(3)ポストフォーディズムでは(2)とは逆に、新自由主義のもとで自分を商品化に装っていく(≒意識高い自分を演出)ための猶予期間であり、そこにはまっていけない学生にとっては不安に蝕まれて病的段階を進行させていくような期間、とされる。

こうした若者をめぐる情勢の変化が、グローバリゼーションに向かう社会の変化、そして社会学の研究者が近年あちこちに触れるようになったギデンズの「再帰性」をキーワードとして説明される。資本主義社会の総括的な視点で、若者の心性の変化を僕のようにざっくりと整理したい向きには良い入門書かも。

学生の就活に関わるくだりは、大学業界に関わる人間なら誰しもわずかの痛みをもって本書を読むだろうと思う。あの空虚な自分史作り、就活に向けた目的論的な自己の物語。自分はそういう自分になるために育ってきたという閉じたストーリーと、インターンシップやキャリア教育で励むことになる着脱可能なペルソナ作り。職場で役立つ汎用的能力や高い意識をどう身につけてきたかという、薄っぺらな語り。

もちろん過当競争が生じている現状、即戦力型人材を求める雇用形態下、すなわち雇用側も経済的に安穏としていられない状況では、そのあたりはアシキリにも用いられないくらいに最低限な「前提」とさえ認識されているだろう。現代の学生にとってのモラトリアム期間は、その論理を内面化するための文字通り命を削るような作業期間でもある。その良し悪しは単純には論じられないが、こういうオブセッションを学生に押し付けることで向かおうとしている危険水域は、実はこの社会を構成する我々が主体的に向かおうとしている水域でもある、という了解は必要だと思う。

(少なくとも)近代における大学の大きな役割のひとつは「社会に人材を輩出」することとされるけれども、現状では「社会に適合できる人材かどうかを振り分ける機関」になりつつあるような。だとすればこんな苦しいモラトリアムもないですよね。悪い方に振り分けられたらどうすんのと。そりゃあサナトリウムとも。

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