佐々木俊尚『電子書籍の衝撃 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?』(→ ディスカヴァー デジタルブックストア )読了。電子書籍の本なので、生まれて初めて、電子書籍の形式で本を読んだ。 今年の3月は、山のような書類を電子化しようと決意して、黙々とスキャン作業に取り組んだ。すでに niji wo mita: 電子化作業:上から下へのTL で記したように、これが生活の質や研究の質をただちに上げるようなことは想定しにくいが、物理的スペースは明らかに生まれたし、論文に関して言えば正確さに留保はあるものの全文検索ができるようになった。 そうやって電子化自体の作業が進むと、当然のことながら今度はそれをどうやって読んだり利用したりするか、ということに興味が移る。A4にコピーした論文をそのままスキャンすると、横長の画面には合うがiPod Touchには合わないなどのきわめて具体レベルに落とし込んだ議論もあるが、それはまた別の機会に書きたい。 * * * * * 本書を読む興味の方向性は、自分でコピーした論文や書類だけではなくて、出版システムや本を読む行為自体など、もうちょっと大きな視点でこの現象を俯瞰してみたかったからだった。 キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット。 これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム。 電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと、本のフラット化。 そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界。 (pp.678-679) アマゾンのキンドルとアップルのiPadの戦いは面白かった。キンドルの方が「読書」に特化したデバイスで、目に優しくモバイルデバイスとPCとでしおりの同期が取れるといったあたりに興味が惹かれる。が、この戦いは既存の「読書」行為に近づく戦いではなく、新しいビジネスモデルの覇者を奪い合うものであるから、我々一ユーザーは雌雄が決するのを待つほかないのかもしれない。 セルフパブリッシングと本のフラット化は、本の流通の多様化を促進するとのこと。乱暴にまとめれば、再販制度に支えられたマスな商売はもはやダメなので、ソーシャルネットワークサービスなどを使ってニッチな世界が今後は展開するとのこと。その時に、タブレットとタブレットを介したビジネスが下支えとなるとの話だった。...
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